渓嵐国泰山海紘宮

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January 2015

January 14, 2015

いやおうなしに

古田新太とキョンキョン、PARCOプロデュースだし、「歌謡」だし、まぁ、ハズレはないか。
と、安易な気持ちでなんの予備知識もなく(チラシの煽りさえ読みもせず)見に来てしまった。
珍しく開場時間に入って、客入りの曲を聞いて「なにこれ?面白いけど?歌詞すげーな。でも、楽曲はやたらかっこいいし。まさしく「歌謡ファンク」だな」と思っていたら、それが劇中の本当の主役「Only Love Hurts」(旧名:「面影ラッキーホール」通称:「O.L.H.」)の楽曲だった。
この芝居は、「O.L.H.」の「歌謡」の世界を舞台化したもの。芝居のために書き下ろされた曲ではなく、「O.L.H.」の歌詞にある世界観を実写化した作品である。
と言っても「O.L.H.」を知らない(数時間前の私を含めた)輩には想像もつかないと思うので、歌のタイトルだけをちょっと書き上げてみよう。
「俺のせいで甲子園に行けなかった」
「好きな男の名前 腕にコンパスの針でかいた」
「あんなに反対してたお義父さんにビールつがれて」
「ひとり暮らしのホステスが初めて新聞をとった」
「おみそしるあっためてのみなね」
「パチンコやってる間に産まれて間もない娘を車の中で死なせた…夏」
重ねて言うが、これ、全部歌のタイトルである。が、これを続けて読んだだけで、くっきりとした生々しい世界観が浮かび上がってくる。一幕目の初め、私の脳裏に浮かんだのはあのNHKのドキュメンタリー番組「72時間」だった。みんな普通の顔して雨の中ガソリン入れに来てるのに壮絶な人生背負ってたりする、あの現実の凄まじさ。空々しいような絵に描いたような「不幸」は実は凄くリアルで、だからこそ「歌謡」にして「昇華」していかなければならないという、昭和の時代には確かに存在していたある種のカタルシスが体現される。
平成も四半世紀経って(ん?なんかYahoo!でググる的表現?)なんだか妙に世の中がクリーンになった。エネルギーや政治家がクリーンなことは喜ばしいが(あ、このふたつは未だクリーンじゃない筆頭でしたね(^^;;)、「平成の清き流れに住みかねて」感も拭えない。人間は清濁合わせ呑んで滋味が出るもんではないかと思うのだが、昨今やたらクリーンさが幅を利かせてて、「つまらない」というか「味気ない」というか「息苦しい」というか。配慮配慮が行き過ぎて、芸術の世界までもなんだか隅々まで光に満ちてて。イカガワシイものとか、下世話なものとか、王道でないものが排除されてしまうのは寂しく無味乾燥。ライヴで褒章受賞をネタにして炎上とかほんと、つっまんねぇ世の中である。もしかすると、このつまらなさって歌謡が無くなっちゃったからではないのか?とまで思わされる演目だった。
そんなイカガワシサ満載、下世話満載、もはや下衆としか言えないスタイルで描き出されるテーマはまさしく「愛」。「愛の測り方」である。

若い時には完全に勘違いしていて、いまだにたまに(イヤ結構頻繁に)失念してしまう、「愛の尺度」への認識。そもそも愛なんて測れるものではない、と「クリーン」に「クレバー」にことばにしてはいるけれど、実際は測りたくてしょうがない。「♪いつだって I love you more than you 」とユーミンの曲が流れたり、「♪仕事と私とどっちが大事よ Love me tonight」とムーンライダーズが流れたり、常に「それ」を気にしてる。愛情の証にモノを買いたくなってしまうし、略奪愛の実話なんぞ聞くとちょっと羨ましくなってしまう(爆)
時間やお金を費やすこと、より困難な状況を乗り越えること、それこそ愛の強さだと、安直にも思ってしまう。
この話に出てくる人たちは、みんなその勘違いに囚われていて、それ故に「不幸」になっていく。けれどもそれだって本当に「不幸」なのか?と問われたら、明確には言い切れない。先日読んだ『無痛社会のゆくえ』という評論が「無痛社会を極めると、喜びを感じにくくなる」と結ばれていて、なかなか感傷的だと感じたのだけど、「一匙の不幸」は「幸福」を増幅させる大切な要因なのかもしれない。
「愛」は「クリーン」や「クレバー」なものではない。「測れない」のは真実だろうけど、「測りたい」のも真実なのだ。「測りたい」気持ちをくだらない、間違ってると切り捨てたら、その瞬間に「愛」の滋味は薄れてしまう。でも、「測りたい」ばかりにとらわれたら、辛くなるばかりで「愛」を擦り切らせてしまう。
断ち切るばかりに「愛」を測ろうと貪欲に臨み、傷つき、壊れていく登場人物たちを眺めながら、オーディエンスである私は、上手にバランスを取ろうと、ずる賢く思う。
「測れない」ことを認識しながら、時々わざと忘れてみよう。
壊れない程度に、壊さない程度に、貪欲に求めてみよう。
時々バランスを失うのも、まぁご愛嬌。
古田新太演じる太一が言うように「一般庶民は底から這い上がる時しか希望がない」のだから、落ちた時でも楽しんで(笑)
悲惨で、陰鬱で、暴力がてんこ盛りの舞台ながら、希望の一歩を登らせるちからのある不思議な演目。
特にご両親からクレームが来るんじゃないかと製作陣が心配している高畑充希ちゃんの体当たり演技は、見もの。
昭和は遠くなりにけり、されど昭和はここにあり。
ちょっと昔のカタルシスに浸りたい方は、是非2月のPARCO劇場へ。CD買います。

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雅俗共賞〜最近観た映画〜

  • 真珠の耳飾りの少女
    :
    光の変化を感じ取るものと、そうでないもの。それを人々は「芸術を解するか否か」と表現するのだけど要は感性の問題。美とか快とかいうものの一致こそが人を理解する根本を成すのだと思った。映像がもの凄くきれい。 (★★★)

音吐朗朗〜最近聴く音楽〜

  • 雪月花
    YUMING: WINGS OF WINTER,SHADES OF SUMMER 
     時に、出会いは偶然。4年も前に発売されたこのアルバムを、今日、このタイミングで初めて聴いたのも、偶然。十代の頃から、ユーミンの曲の「やさしさに包まれ」て、歌詞の鋭さに突かれて、何度も窮地を切り抜けてきた。今回も、きっと背中を押してくれるね。どんな状態になっても、私らしく、凛といること。そうきっと「悲しみにも時は流れ 海へと注いでいく」のだから。 (★★★★★)
  • 『愛と欲望の日々』&『Lonely Woman』
    サザンオールスターズ:
    『大奥』のようなドラマを軽やかにするのはサザンしかいないのかも。女の情念なんてハレルヤ!ってなもんかな。きらびやかなジャパネスク調のサザン(世は万葉あたりね)、実はかなり好き(^-^)『Lonely Woman』は秋冬のサザン。実はサザンは全天候型なのよ(笑)(桑田さんは雨男だけど) (★★★★)
  • 乙女ノックアウトナイト
    比屋定 篤子: ひやじょう
    久々発売の4thアルバムのお気に入りの曲。もう大分前からライヴでは歌われていたけど、毎回このテンポにくらくらでした(^-^)レコード会社の人からこの題名は・・・と言われたらしいけど、この題名あってこそ、だと思う。オザケンの『東京恋愛専科・または恋は言ってみりゃボディーブロー』を思わせますです。 (★★★★)
  • ミモザ
    ゴスペラーズ:
    最近、どれを聴いても同じに聴こえる(爆)新しい刺激が欲しいよぉ。でも、サビの黒ポンの声は良いね。あとCMの唐沢くんもね。 (★★)

錦心繍口〜最近読んだ本〜

  • J・K・ローリング: ハリーポッターと秘密の部屋
    ハリーポッターシリーズは、話題になってすぐに1作目を読んだのだけど、正直、あまり興味が持てず、そのままにしておいた。が、最近、生徒と面接の練習をしている時に「教育学部に行きたいと思ったのは、ハリーポッターシリーズのダンブルドア校長先生の影響があります」というのを聞いて、改めて読んでみようと思った。この巻でも、自分がスリザリンと関係深いのではないかと悩むハリーに、「大切なのは、どう生まれたではなく、何を選ぶかだ」と助言するところがいちばん心に染みた。なるほど、教育指南書として読むハリーポッターもありだな、とシリーズ読破を試みている。それにしてもロックハートは、ひどすぎる教師だ(笑)
  • 竹田 青嗣: 「自分」を生きるための思想入門
    思想とは、社会的には人間に「正しいこと」を教えるものではなく、社会の中で絶えず「より合理的な関係」を作り出していくための“技術”であり、実存的には、個々の人間が、自分の生全体から「より大きいエロス(生きる喜び)」を引き出すための有効な“技術”であるという主張には、目から鱗が落ちた。自分が目指す生き方のために、様々な思想家の思想をどう理解し、どう選び取るか。哲学とはかくも実用的なのかと感動した。さて、私は、何をえらべばいいのか。それこそ、自分でしか決められない実存的問題なのである。 (★★★★)
  • 鈴木 真砂女 ・黛 まどか : 恋がすべて
    新旧女流俳人対談集。鈴木 真砂女という名前は知っていたが、こんなにも壮絶な恋をした人だったとは・・・その激しさと、強さと、美しさに号泣。魂が惹かれあうというのは、きっとこういうことを言うのだろうな。そんな巡り会いがひとつあれば、人はしあわせなのだと思う。黛さんも、そういう恋が出来るといいですね(笑) (★★★★)
  • 小谷野 敦: モテない男
    ものすごく面白くて、旅行中に二日で読み終えて、友人に押し付けてきた(笑)「恨み言」的な体裁を取りながら、しっかり分析されているところが流石。「恋愛はしなくても生きていける」と提唱したいけど出来ないジレンマが面白かった。(なんて言ったら怒られるかも)私はやっぱり本居宣長派の恋愛至上主義です(^^; (★★★★)
  • 養老 孟司: バカの壁
    今更ですが(笑)これって、ベストセラーなんだよね?一昨年、日本でいちばん読まれた作品なんだよね?こういう「もっともなこと」の溢れた本がそんなに売れてるのに、こんなにどうしようもない社会なのは何故なんだろう?(^^;「個性」についての考え方など、とてもわかりやすくて的確だと思いました。 (★★★★)
  • 瀬尾 まいこ: 図書館の神様
    文学音痴のでもしか国語教師が主人公。結構いるんだよね、実は(爆)私、もの凄く苦手なんだけど(爆)でも、まぁ、現代的には響きやすい話なのかもしれない。これをきっかけに漱石や周五郎を読む人が出れば、それはそれで良いのでしょう(^^; (★★★)
  • 小谷野 敦: 性と愛の日本語講座
    近現代文学における性愛に関係する言葉を、まじめに調べた一冊。下世話に思える言葉であろうと、いくつもの出典に当たって読み解いて行く作業はまさに国文学。大学でやってたことを思い出して楽しかった(^-^) (★★★★)

気韻生動〜最近観た舞台〜

  • Dr.TV
    福澤一座:
    福澤一座の第二回公演。言葉とテレビにこだわったこの作品群は、これからも小さなエピソードを繋いでいく形なのかな?正直言って、去年の方が面白かったなぁ(^-^;)しかし、森圭介アナはやっぱり好み(^^;一瞬「畑中くん?」と思う部分があって、やっぱり好きなタイプが似ていることが判明。結局ショタコンか(爆) (★★★)
  • SHIROH
    劇団☆新感線:
    歌うような台詞、とよく言うが、歌がきちんと台詞になっていることに感動。上川さんはとても歌が上手いと言う訳ではないのだが、すごくまっすぐに体に染みてくるのだ。『マイ・フェア・レディ』の レックス・ハリスンみたい。もう一人のシロウ、中川くんはもの凄く歌がうまかった。そして、ロック。それから迫力の群舞。すごい。少しは見習え<『クラ○ディア』(爆) (★★★★)
  • 『スキップ』
    演劇集団キャラメルボックス: タイムトラベルシアターVol.1
    都合三回鑑賞。一度目は現在の自分に重ね合わせて観てしまって号泣。二度目は少し冷静になり、自分が頭の中でだいぶ補って見ていること気付く。それでも、告白されると泣いてしまう(;_;)3度目の千秋楽は、坂口さんの熱演にまた引き込まれ、クライマックスでやっぱり涙を禁じ得ない。とにかくさわやかに泣けた。演劇としての構成の問題などはあるのだろうけど、小説も含めて十二分に『スキップ』の世界を堪能できたことに感謝。 (★★★★)
  • 沖縄ラーメンズライヴ
    ラーメンズ:
    『沖縄ラーメンズライヴ  サーターアンダギーは見かけのシンプルさの割に名前が長過ぎ  A&Wは貴方と私の略。  ラーメンズにとって沖縄が楽園になるかどうかは客次第』 やっぱり頭の良い人の考えることは面白い。 (★★★★)
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