映画:るろうに剣心 #ruroken_movie
『龍馬伝』の第1話を見た時の衝撃は、忘れられない。
埃まみれの袴、ほつれまくった総髪、日に焼けた肌、
ああ、幕末の志士はかくありなん、と
長年焦がれ続けたビジョンが目の前に現れた気がした。
中でも魅了されたのが、佐藤健演じる岡田以蔵。
もともと以蔵は好きな人物なのだが、
そうか、これだったんだ、と思えた。
武市半平太に身も心もすべて捧げて仕えながら
「理もないくせに」と蔑まれ、
「儂は難しいことはわからんきに」と
寂しそうに微笑む岡田”佐藤健”以蔵は、
触るれば斬れる鋭さと、常に死の淵にある儚さを併せ持ち、
その薄汚れた出で立ちさえもまるごと、
なんとも魅力的であった。
最初に配役を知った時は、
可愛らしすぎるのでは?と思ったのだが、
今や、岡田以蔵は佐藤健以外考えられないと思っている。
幕末好きでありながら、
あれだけ一世を風靡した『るろうに剣心』については
ほとんど知らなかったのだが、
佐藤健主演で映画化されると聞いて、至極納得した。
「人斬り」でありながら「細身で童顔」の儚げな元志士。
岡田以蔵に重なるその人物を、あの佐藤健が演じる。
しかも、監督は『龍馬伝』の大友啓史。
これは見るしか無い、ということで
珍しく先行上映に行ってきた。
幕は鳥羽伏見の戦いに開ける。
戦闘シーンの迫力はまぁ書くまでもなく(私には過多に感じられたけど)
その荒涼とした戦場にすっと立つ佐藤健の姿は
「人斬り抜刀斎」などという物々しい名にはとても似つかわしくない可憐さ。
倒幕軍が錦の御旗を手にしたことで、
「終わった」と刀を捨てるその動作だけで、
今までの苦悩を全て表現し、物語の本筋へと誘う。
ストーリーは、幕末に「人斬り」として名を馳せた緋村剣心が
明治10年代、逆刃刀なる反りと刀背が逆になった人を斬れぬ刀を下げ、
自分の身近な人を守っていくうちに巨悪を倒す、という
シンプルなものだが、それを補って余りあるキャラクターの魅力が溢れている。
くわえ煙草で、刀を振り回す江口洋介演じる斎藤一は
そのヤサグレ感が、実に敗戦の将、新選組三番隊長らしく、
明治になって警察官になった後にも、その匂いが上手く残っていて
影の主役と呼ばれるのも納得の佇まいだ。
剣心の右腕となる喧嘩屋相楽左之助は青木崇高。
『龍馬伝』の後藤象二郎でもあるが、私にとっては
モジャモジャ頭の落語家草々さん、である青木くんは
今回もとてもワイルドな役回りである。
胸中に闇を抱える剣心とは対照的な
晴れた夏空のようにスカッとした気性が、
見る人に安心感を与えてくれる。
剣心&左之助が立ち向かうは、
「抜刀斎」の名を名乗り惨殺を重ねる鵜堂刃衛役は吉川晃司。
この人の狂気が映画をもり立てたのは言うまでもない。
とにかく本気で恐い。
眼力で妖術をかける役柄なのだが、その眼の力が尋常ではない。
刀が血を欲しがっている、という台詞の通り
人を殺すことを楽しんでいる様子は、
胸が悪くなるほどに真に迫る。
青木くんもだが、やっぱりタッパがあるのは、大きい。
鵜堂とはまた全く別の不快感を感じさせるのが
香川照之演じる武田観柳。
まずは役名に苦笑。
新選組好きなら誰もが「ああ、惣三郎・・・」と思ったはず(笑)
一般的には、『御法度』な人かな。
まぁ、もちろん、武田観柳斎は幕末に切腹しているので
名前にイメージを借りただけだろうが
綺麗に切りそろえた妙な髪型といい、
拝金主義を絵に描いたような言動といい、
絵に描いたような悪役。
香川さんはやっぱり抜群の存在感だ。
そして、何より、やっぱり佐藤健。
細身の体に赤い着物を着崩し、長い茶髪をゆるく結わえて
実に迅速に動く。
動きもすごいのだけど、何よりも表情。
健くんは目がいいと思っていたのだが、
今回、口元の演技に魅了された。
ほんの少し口角を上げると、華奢な顎が強調された
なんとも淋しげな笑顔になる。
原作特有の「〜ござる」や「おろ?」というような
実写では白々しいだろうと思われるような台詞回しさえ
なんだか馴染んでしまうのだからすごい。
いちばん素晴らしかったのは、二度と人を殺めないという決意を
覆した瞬間の狂気をはらんだ表情。
その一瞬の変化に息を呑む。
あの瞬間を大スクリーンで見るだけでも価値がある。
大方、合格点だと思うが、難を言うならば・・・
薫の魅力が感じられなかったこと。
剣心が何故そこまでして薫を守りたいのかが
残念ながら伝わってこない。そこが痛い。
薫が蒼井優ちゃんのほうがよかったんじゃないだろうか・・・・
近年の若い俳優さんは、すごい人が多いけど
女優さんが追いついてない感じが否めない。
20代前半の実力派女優がほしいなぁ。
個人的には福田麻由子ちゃんに期待している。

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